妊娠と病気の関係

知っておきたい病気と妊娠の関係

婦人科系の病気
妊娠と病気

子宮内膜症

本来は子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜が別の場所にできてしまう病気です。代表的な症状はひどい生理痛、生理のとき以外の下腹部痛、性交痛、排便痛など。20~40代の女性に多く、生理のある女性の10人に1人がそうであるともいわれています。

不妊症との関係が注目されていますが、イコールではありません

子宮内膜症と不妊症の関係がクローズアップされ、これから妊娠を考えようとしている人のなかには、将来に不安を感じている人も多いようです。実際のところ、子宮内膜症が不妊を引き起こすメカニズムではっきりわかっているのは、かぎられたケースのみ。

進行して卵巣や卵管の周囲に癒着が生じたり、卵巣チョコレート嚢腫が大きくなって、卵巣と卵管の位置関係が悪くなり、排卵しても卵管がスムーズに卵子を取り込めない場合がそうです。その場合も、手術で癒着を取り除けば妊娠する可能性はあります。

子宮内膜症が不妊の最大の原因といわれることもありますが、実際は原因全体の5%程度。子宮内膜症を、すべて不妊に結びつけるのは間違いです。

妊娠中は自然の治療のようなもの。ただし、産後再び症状が出る人もあります

子宮内膜症の薬物療法は、ホルモン薬で一定期間生理を止める方法が主流。妊娠した場合も、その間は生理が止まるので、痛みはなくなります。いわば薬を使わずに、自然の治療を受けているようなもので、妊娠経過にも影響しません。

ホルモン剤は一度に6ヵ月程度の使用が限度なのに対して、妊娠では約10ヵ月、授乳期間を含めると1年以上生理がない状態が続くので、そのまま症状が軽くなる人も。薬より治療効果が高い場合も多いようです。一方、授乳期間が終わり、生理が再開すると再び症状があらわれる人もいます。

生理痛

病気が隠れていなければ 妊娠に影響なし

鎮痛剤をのまないと日常生活ができないほどのひどい生理痛でも、背景に子宮内膜症、子宮筋腫などが隠れていない場合は、それだけで妊娠しづらいなどということはありません。出産前は、子宮口が固く閉じていて、スムーズに月鮮血が排出されないため、子宮が強く収縮して痛みがひどかった人も、出産すると子宮口が開いて、月経血が出やすくなるので、自然に治ることが多いようです。

生理痛とは小型の陣痛のようなもの。生理痛がひどいと、お産の陣痛もひどいのではないかと考える人がいますが、その心配はいりません。お産のときには、経過とともに自然に子宮口が開いていくので、生理痛の強さとは無関係。むしろ、痛みに慣れていて、陣痛がらくに感じられる人もいるようです。

子宮筋腫

子宮の内側、外側、子宮筋の中などにできる、良性の腫瘍が子宮筋腫です。症状がまったくないこともありますが、なかには生理痛、過多月経、ひん尿などに悩まされる場合もあります。40歳前後の女性の約3割にみられるといいますが、20歳代でもみられます。

筋腫のある場所によって影響が違います。内側に出ているタイプは要注意

妊娠への影響の有無は、子宮筋腫のできている場所や大きさによって違います。影響する可能性があるのは、大きな筋腫が子宮の内側に飛び出している場合(粘膜下筋腫)。障害物があることで、受精卵の着床が妨げられたり、流産の原因になることがあるので、妊娠を望む場合は手術でり除くこともあります。

子宮の外側にあるタイプ(漿膜下筋腫)は、大きさにもよりますが、妊娠の成立に影響しないことが多いようです。子宮筋の中にできるもの(筋層内筋腫)は、子宮内腔がどの程度変形しているかによって、妊娠への影響が異なり ます。

妊娠中は筋腫も成長する場合がありますが、 赤ちゃんへの影響はありません

子宮筋腫を持つたまま妊娠すると、妊娠が進むうちに筋腫も大きくなることがあります。でも、本来子宮は伸縮性に富んでおり、赤ちゃんが筋腫で圧迫される心配はないそう。妊娠中に手術で取り除くことは、ほとんどありません。ただし、筋腫が大きくなるために、強い痛みが出ることがあり、その場合は、赤ちゃんに影響のない鎮痛剤が処方されます。

分娩への影響もケースバイケースですが、子宮頸部にできた筋腫が邪魔をして、赤ちゃんが下りてこられないような場合には、帝王切開になることもあります。なお、子宮筋腫の手術を受けたあと妊娠しても、妊娠経過に影響はありません。ただし、筋腫を摘出するために、手術で子宮の筋層を子宮内膜まで切断した場合は、陣痛によって子宮破裂を起こす危険性があるため、帝王切開になることが多いようです。

また、帝王切開を受けたときに、ついでに筋腫も摘出してほしいという人がいますが、感染のリスクが高くなるため、できません。

卵巣嚢腫

妊娠前に治療しておきたい病気

卵巣に水や粘液などがたまって、はれてしまう病気です。下腹部が重苦しいこともありますが、自覚症状がないことが多く、ふだんは長さ2~4cm程度の卵巣が、握りこぶしくらいまで大きくなっても気づかないことも。卵巣嚢腫で不妊症になる可能性があるのは、卵巣がはれたために卵管から遠ざかって、卵子が取り込めなくなるため。片側の卵巣が健康な状態なら、妊娠は充分可能です。

妊娠中に発見された場合は、妊娠4ヵ月に入ってから、手術で嚢腫だけを摘出することが多いようです。大きくなった卵巣嚢腫は、放っておくと茎捻転(卵巣の根元の部分がね じれる)を起こし、激痛を引き起こす危険性があるため。妊娠中の手称fというと、意外な印象がありますが、珍しいことではありません。とはいえ、不安な事態を避けるために、婦人科検診を受けて異常が見つかったら、妊娠前に治療を終わらせておきたいものです。

STD(性行為感染症)

セックスによって感染する性行為感染症には、いろいろな種類がありますがl最近増えているものにクラミジアやヘルペス感染症が挙げられます。放っておくと不妊症の原因になったり、赤ちゃんに感染する場合も。少しの注意で防げることなので要チェックです。

最近増加しているクラミジア感染症は不妊をまねきます

性行為感染症のなかでも、女性不妊の原因として増加しているのが、クラミジア感染症。子宮頸管や卵管などに炎症を起こし、症状が進むと卵管が詰まったり、卵管の周囲に癒着が起こるためです。女性の場合、自覚症状がないことが多いのですが、注意してみると、出血やおりものが増加することも。

男性の場合、尿道炎を起こし、尿道からうみが出ることがあります。抗生物質を1~2週間服用すれば治りますが、セックスで感染するので、おたがいにうつしあうピンポン感染を防ぐ必要が。

両方が完治するまで、コンドームを使用するか、セックスは中断すべきです。 妊娠中の女性がクラミジアに感染していると、産道から赤ちゃんに感染して、結膜炎や肺炎を起こすことがあります。なるべく妊娠前に完治させておきたいものです。

ヘルペス感染症は胎内や産道で赤ちゃんへの感染の可能性あり

ヘルペスウイルスの感染で起こり、約1~3週間の潜伏期間を経て発症します。最初はむずがゆく、だんだん痛みに変わるのが特徴。外陰部に米粒大の水泡がたくさんできて、下着でこすれてつぶれると、歩けないほど痛みます。感染している女性が出産した場合、胎内で感染する先天性ヘルペスか、分娩時に産道で感染する新生児ヘルペスになる可能性があります。

前者はまれですが、後者は生命の危険をともなうことも。女性が分娩の直前に感染すると、産道感染から新生児ヘルペスになりやすいので、帝王切開が選択されます。女性のヘルペス感染症そのものは、約2~3週間で体の中にウイルスに対する抗体ができるため、放置しても自然に治りますが、再発することもあります。治療には抗ウイルス剤が有効です。

子宮がん・乳がん

初期の子宮頸がんなら、妊娠の可能性を残せます

かつては、子宮がんが発見されると、子宮や卵巣は全部摘出するのが普通でしたが、最近は病気の進行度や本人の希望に応じて、妊娠の可能性を残す手術が選べるようになってきました。子宮がんには、子宮の入り囗付近にできる 子宮頸がんと、奧にできる子宮体がんがあります。

比較的若い年齢層に多いのは子宮顎がんで、ごく初期なら。病巣部分のみをレーザーで焼いたり、円錐形に切除する手術もできて。手術後の妊娠も可能。円錐手術を受けたあとは、精子が頸管粘液をうまく通れなくなって妊娠しづらくなったり、頸管無力症になって流産や早産のリスクが高くなる可能性も。

妊娠への影響はレーザー手術のほうが少ないようです。妊娠によってがんが悪化する可能性は、ないと考えられています。一方、乳がんは、発症の原因に女性ホルモンのエストロゲンとの関係が指摘されており、妊娠するとエストロゲンの分泌量が増えるので、悪化する可能性があります。がんの治療を優先させ、再発がなければ妊娠を考えるようにしましょう。

そのほか、婦人科系で気になること

カンジタ膣炎にかかってる

カンジダ・アルビカンスという、かびの一種の感染で起こります。外陰部がむずがゆく、白い豆腐かすのようなポロポロしたおりものが増えるのが特徴。セックスでパートナーからうつされることもありますが、カンジダはふだんから人の体に存在する菌で、いつ感染したかわからないほうが多いものです。また、健康なときなら悪さをしませんが、疲れて体の抵抗力が弱ったときや、風邪などで抗生物質をのんだときに症状が出ることもあります。

治療は、抗真菌剤の膣卒薬と軟膏で行います。治療で自覚症状はなくなりますが、完治はなかなかむずかしいもの。そのため、症状さえなくなれば、完治させる必要はないと考えている産婦人科医も、少なくありません。 分娩のときにかかっていると、産道で赤ちゃんに感染して、おむつかぶれを起こすことがありますが、軟膏を塗れば簡単に治るので心配いりません。

子宮後屈である

子宮は普通、前に傾いた形になっていますが、逆に後ろに傾いている状態を子宮後屈といいます。子宮後屈だと月経血が排出しにくいので、生理痛が強くなる場合もあります。構造的に精子を吸い上げにくいため妊娠しづらいと考える人がいますが、子宮はスポイトのように精子を吸い上げられるので、後屈 そのものが不妊をまねくことはありません。

むしろ、もともと子宮後屈なのではなくて、子宮内膜症や下腹部の炎症で腹腔内に癒着が起こるなど、後天的に子宮後屈にさせている原因が、不妊をまねく可能性は考えられます。妊娠後は、子宮はどんどん大きくなるので、子宮後屈が妊娠経過や出産に影響することはありません。

以前に流産したことがある

3回以上繰り返して流産した場合は、習慣流産と呼ばれます。このなかにも、なんらかの原因があるものと、たまたま3回流産をしたという人がいますが、自然流産のほとんどは胎児の染色体異常が原因で、予防できません。習慣流産の原因には、夫婦いずれかの染色体異常、子宮の奇形、子宮頸管無力症、糖尿病、感染症、ホルモンの異常、自己免疫、夫婦の免疫学的な榾哇なども考えられますの で、検査を受けたほうがいいでしょう。

2回の場合でも、心配なら受診を。子宮頸管無力症の場合は子宮頸部をしばる手術、糖尿病の場合は食事療法などと、原因によって治療法が異なります。2回続けて流産しても、それ以降も繰り返すとはかぎりません。回数が増えると頭打ちになるというデータもあるので、考えすぎないことも必要でしょう。流産のあとは、生理が2回あれば次の妊娠にトライしても大丈夫です。

中絶経験がある

中絶手術を受けたからといって必ず不妊になるわけではありませんが、可能性はあります。また、流産しやすかったり、胎盤がはがれにくいなど、妊娠や分娩に影響することも。 そうは妊娠初期に行われる掻爬手術は、キューレットというスプーンのようなもので、着床した胎児とともに子宮内膜をかき出すもの。この操作は、目で見ながらではなく、医師の手先の勘に頼って行われるので、子宮に傷がついて癒着が起こる場合があります。

また、膣内の細菌が子宮や卵管に入り込み、感染が起こる可能性もあります。子宮内の癒着や卵管閉塞は不妊の原因に。中絶手術後はダメージを最小限にするために、子宮が完全に回復するまでセックスは控える、無理をせず安静に過ごす、手術後の検診は欠かさず受けるなど、医師の指示はきちんと守りましょう。

親、姉妹も赤ちゃんができにくかった

不妊症が直接遺伝することはありませんが、不妊をまねきやすい体質が遺伝する可能性はあります。たとえば、糖尿病や多嚢胞性卵巣症候群になりやすい体質は、遺伝によって受け継がれることも。とくに糖尿病は、女性では流産が起こりやすい傾向に、男性では勃起不全の原因になる可能性があります。そういう体質がなければ、親や姉妹が妊娠しにくかったとしても、闘系ありません。

これまで避妊していなかったのに妊娠しなかった

まったく避妊していないのに妊娠しないと、いざというときに本当にできるかな?と不安に思うかもしれません。避妊をしないと、すぐに妊娠すると考える人もいるようですが、妊娠の可能性がある時期、排卵日の前3日から後1日の、計5日間。タイミングが合っているかどうかを確認しましょう。

たとえタイムリーにセックスをしても、1回の妊娠率は20%程度です。今までたまたま妊娠しなくても、何回か繰り返すうちに妊娠する可能性は充分に考えられます。