妊娠初期は薬の影響を受けやすい

妊娠したら薬の使用は慎重に

この記事は福岡の病院の産婦人科専門医が監修しています
妊娠初期の薬

妊娠初期は薬の影響を受けやすい

頭が痛い、ストレスで胃が痛いなど、体の調子が悪いと、つい薬に頼ったりしていませんか?たしかに、じっと我慢するより、早くのんでスッキリしたいと思うもの。でも、ふだんは何気なくのか薬も、いざ妊娠すると「赤ちゃんは大丈夫かしら?」と心配になる人が多いようです。

本当に必要があって薬をのんでいますか?

妊娠前にのんだ薬が直接影響することはあまりありませんが、妊娠中は要注意。ふだんから薬に頼る習慣があると、使わずに過ごすのが大変です。

持病があって、医師と相談しながら薬を使う場合はしかたがないにしても、本当は、胃が痛くなる前に、ストレスを解消するなど、薬をのまなくてもすむ方法があるのかもしれません。

まずは、今のんでいる薬が絶対に必要かどうかをよく考えて、ふだんの生活をもう一度チェックすることが、薬とのつきあい方の基本です。

先天的な病気をまねく確率はそれほど高くない

薬が赤ちゃんに影響する可能性があるといっても、のんだ人すべてに影響があるというほどのことではありません。平均して3~4%くらいの子は、なんらかの先天異常を持って生まれてきますが、薬などが原因で起きるのはこのうちの1割以下。過去に、サリドマイドという睡眠薬をのんでいた母親から生まれた子どもに、奇形が起こった大事件がありましたが、その発生率は3割程度でした。

現在は、もっとも危険と考えられているものでも、もともと異常発生率が3~4%のところ、6~8%になるかどうかというレベルの話です。妊娠中に薬をのんだからといって、すぐに中絶を考えるようなことではありません。

それでも、なるべく薬を避けたい理由は、「妊娠がわかっていたら、のまなかったのに……」と後悔して、妊娠中をずっと不安な気持ちで過ごすような事態が起こらないように。

あるいは、赤ちゃんがなんらかの異常を持って生まれてきたときに「あのときに、私が薬をのまなければ……」と薬のせいにして、自分を責めてしまうことを防ぐためです。無用な心配をなくす意味でも、薬の使用には慎重になりたいものです。

持病で投薬治療中なら妊娠計画を医師と相談

一方、持病があって薬で治 療を続けている人の場合は、勝手な判断で薬をやめるとかえって危険なこともあります。薬の影響と病気の影響、母体と胎児のバランスを考えて、影響の少ない薬を選ぶことも可能なので、事前に対策を考えておきたいものです。
妊娠を考えはじめたら、まずは、主治医に相談し、計画的に妊娠することが大切。「持病があるから妊娠は無理」と考えている人でも、医師とよく連携をとって病気をコントロールすれば、可能性はあります。あきらめる前に、ぜひ相談してみましょう。

妊娠初期による薬の影響

妊娠中に母親がのんだ薬は、胎盤を通しておなかの赤ちゃんの体にも入ります。ほとんどの薬で、母親の血液中の濃度と赤ちゃんの血液中の濃度は同じになります。つまり、お母さんがのんだ薬は赤ちゃんも同じようにのんでいると考えましょう。もっとも注意が必要なのは妊娠4週~妊娠7週末。それ以外の時期にも、もちろん注意は必要です。

妊娠(受精)前~妊娠3週末

赤ちゃんへの影響はありません

のんだあと、体内に成分が残る薬はほんの一部(風疹生ワクチン、慢 性関節リウマチの薬の一部)で、ほとんどの薬は24時間で体の外に出てしまいます。だから、妊娠前にのんだ薬が赤ちゃんに影響する心配はありません。

ただ、受精する前の卵子が蘂の影響を受けた場合は、妊娠しにくくなる可能泄があります。妊娠を考えはじめた段階で、使う薬が本当に必要なものかどうかを、あらためで検討しましょう。

妊娠4週~妊娠7週末

手足や内臓ができる、もっとも大事な時期

ちょっと生理が遅れたかな?というころで、まだ妊娠に気づいていないことも多い時期a胎児の手足や中枢神経、心臓、消化器などの重要な器官が形成される、もっとも大事な時期です。薬によっては、異常を起こす可能性があるものもあるので、妊娠する前から薬の使用は慎重に。

妊娠に気づかずに場合でも、中絶をしなければならないようなごとはまずありませんが、どうしても心配な場合は、専門医に相談を。のんでしまったことは忘れて、それ以後はのまないように心がけましょう。

妊娠8週~妊娠15週末

手足や内臓ができる、もっとも、大事な時期

重要な器官の形成は終わっていますが、性器などはまだ完成していな いので、なお注意が必要です。 男女の性別は受精した瞬間に決まりますが、胎児の外性器は、どちらも初めは女性こ近い状態です。

その後男性では、女性の大陰唇に相当するところが睾丸に、クリトリスに相当するところがペニスに変化していきます。この男性化か完成するのが妊娠12週~妊娠14週ごろ。薬の影響が出るとすれば、性器の異常となってあらわれます。

妊娠初期の薬別・対応早見表

妊娠中は、のまないに越したことはないのはわかるけれど、 治療のために必要な薬もあるもの。薬別の注意点を挙げましたが、迷ったときは、産婦人科の主治医や持病でかかっている医師に、遠慮なく相談することが大切です。

便秘薬

妊娠中は腸の働きが低下するために、よく便秘になります。便秘薬には、腸の働きをよくする薬と、便を軟らかくする薬がありますが、いずれ も全身ではなく腸だけに作用するので、赤ちゃんへの影響はありません。

ただし、薬に頼る前に、繊維質の多い野菜たっぷりの食事をとる、水分をたくさんとる、運動不足にならないなど、生活習慣の改善も心がけましょう。

頭痛薬

市販の薬は、数日の服用の場合はほとんど問題ありませんが、それ以上、長期に服用することは厳禁。妊娠初期よりもむしろ妊娠中期、後期にのむと、赤ちゃんにとって大切な動脈管という血管が閉鎖 される、羊水が遽る、予定日が 超過しても生まれないなどの影響が出ることがあります。

また、偏頭痛の薬のなかには子宮収縮作用のあるものがあり、早産になったり子宮内胎児死亡になることもあります。産科でも、妊娠中の頭痛は、生活改善など、薬以外の方法で改善するように指導することが多いようです。

ビタミン剤

ビタミンAを妊娠初期3ヵ月以内に1日5000~1万単位以上、続けてとると、赤ちゃんに奇形が起こる可座生があります。疲れたからといってビタミン剤をのみすぎるのは厳禁。きちんとバランスのとれた食生活をしていれば、 わざわざビタミン剤で補給する必要はありません。 

また、貧血予防のためにレバーを食べるのは有効ですが、ビタミンAのとりすぎにつながるので、続けてたくさん食べるのはやめましょう。一方、葉酸は赤ちゃんの先天異常発生の予防効果があることがわかっており、病院によっては、必要量の服用をすすめることもあるでしょう。

胃腸薬

制酸剤、胃粘膜保護剤、消化剤は問題ありませんが、吐きけ止めのなかには妊娠前に のむと、生理のリズムがくずれて排卵しなくなる可能陛の あるものがあります。 妊娠中のつわり対策は、よ ほどひどい吐きけでないかぎり薬の使用は避け、水分の補給や充分な休養を心がけましよう。

ただし、水分もとれないほど症状が強い場合は、重症妊娠悪阻として治療の対象になります。自己判断で薬をのまず、医師に相談してみましょう。水分の点滴だけで症状がかなり改善しますし、比較的安全な制吐剤や、つわりに有効とされる漢方薬(小半夏加茯苓湯)もあります。

精神安定剤・睡眠薬

種類によっては妊娠前にのむと、生理のリズムがくずれて排卵しなくなる場合があります。生理の変化に気づいたら医師と相談しましょう。妊娠中期、後期にのむと、赤ちゃんの黄疸が強<なったり、筋緊張低下、嗜眠(うとうとした状態)、神経過敏などの影響の出る可胞生が。

妊娠中の不安や不眠は、原因を取り除く心理療法や環境改善を基本にして、どうしても好転しない場合は、主治医に相談して補助的に最小限の薬を使います。素人判断で通院を中断すると、症状が悪化し、胎児にも悪影響を及ぼすことになりかねないので、心配ごとは必ず医師に相談を。

風邪薬

風邪薬は、風邪そのものを治すのではなく、症状をやわらげる薬。用法、用量を守って短期間のむぶんには問題ありませんが、妊娠中は、必ず産科で相談するようにしましょう。妊娠に気づかずに、うっかり市販の薬をのんでしまっても、まず問題はありません。

ただし、ふだんから薬だけに頼らず、休養と栄養を充分にとることも忘れずに。 また、感染を防ぐために人ごみに出ない、よくうがいと 手洗いをするなど、風邪予防の基本をしっかり押さえましょう。

抗てんかん薬

妊娠初期にのんだ母親から生まれた子に、口唇口蓋裂(上くちびるや上の歯の裏側 が割れている)などの先天異常や、発育の遅れがあったという報告があります。異常発生の頻度は通常の妊婦の2~3倍に上るものの、健康な子を出産する可能性も90%以 上。妊娠を考えはじめたら、主治医に相談しましょう。

長い間、発作がなければ、妊娠前から量を減らすか中断、あるいはより安全な薬剤への変更を検討します。妊娠中は、薬の血中濃度を測って、量を調節することも。発作が再発すると胎児が羝放素状態になるので、自己判断で薬を中止するのは厳禁です。

ホルモン薬、ピル

生理不順の治療に使うホルモン薬や、子宮内膜症治療薬が妊娠中に処方されることはありませんが、問題は妊娠に気づかずにのんでしまうケー ス。女児の男性化など、性器の形成に影響を与える場合があります。

ホルモン薬を使う場合は、妊娠していないことをはっきり確認し、医師から指定された使用開始日、期間や量をきちんと守りましょう。 なお、ピル(経口避妊薬)を妊娠に気づかずにのみつづけてしまっでも、胎児への影響があったという報告はありません。

抗アレルギー薬

ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症など、アレルギーの原因によって治療薬も違いますが、妊娠中に使用して奇形などの異常があらわれたという報告はありません。ただ、妊娠中は使わないほうがよいとされる薬もあるので、主治医とよく相談しましょう。

妊娠をきっかけにアレルギー症状が軽くなる人もいますが、副腎皮質ステロイド薬は自己判断で使用をやめると、症状が舊化することがあるので、妊娠中の治療は主治医と相談して決めましょう。塗り薬は、内服薬と比べて胎児への影響は少ないと考えられています。

抗生物質

一般に広く使われているペニシリン系やセフェム系と呼ばれる抗生物質は、胎児には安全です。しかし、テトラサイクリン系(赤ちゃんの骨や歯への色素沈着)やアミノグリコシド系(赤ちゃんの聴力障害)など、胎児に影響することがあるものもあります。 妊娠中に感染症などの治療をする場合は、胎児への影響のなるべく少ないものが選択されているので、心配いりません。

漢方薬

漢方薬は副作用がなくて安全と考えている人が多いようですが、妊娠中に使うと血圧上昇などの副作用が強く出てしまうもの(生薬の附子)や、流産や早産をまねく危険性があるもの(生薬の牛膝、桃仁、牡丹皮、大黄)があります。 専門医に相談し、配合されていないかどうかを確認しましょう。大黄は母乳中に移行して赤ちゃんが下痢をすることがあるので、授乳中も要注意です。

男性がのむ薬と妊娠

精子がつくられるには、だいたい70~80日間かかるといわれます。射精の前には、すでに精子となって蓄えられているので、直前にのんだ薬の影響はありません。影響する可能性があるのは受精の2~3ヵ月前に使った薬。

でも、影響を受けたとしても、受精しないか、着床しないで妊娠早期に流産するかなので、妊娠率が低下する可能性はありますが、赤ちゃんに影響することはありません。

妊娠中で薬のことで相談したいとき

妊娠と薬情報センター

  • 出典元:妊娠・授乳とくすり
    監修 武久レディースクリニック 佐藤 孝道、聖路加国際病院 女性総合診療部 酒見 智子

妊娠初期をサポート| FORTIES

この記事は妊娠初期をサポートする情報メディアサイトとして病院の医師、産婦人科専門医が監修した文献をもとにFORTIESが加筆・修正し掲載しました(2018.08.06)

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