脂質バランスを改善して、生活習慣病と認知症を防ぐ

認知症予防と食事

油(脂質)は、肥満や生活習慣病を招くとして敬遠されがちです。しかし、脂質は、生命活動を維持するうえで欠かせない三大栄養素のひとつで、全身の細胞の細胞膜や、遺伝情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)の材料となります。

脳の神経細胞の細胞膜をつくっているのも脂質です。これらの細胞が、加齢などで傷ついたときに、修復する働きも担います。 つまり、脳の神経細胞を守り、認知症を防ぐためにも脂質は欠かせないのです。

ただし、とり方には注意が必要です。脂質にはいくつかの種類があり、動脈硬化や生活習慣病の原因となって認知症のリスクを高めるものと、血管を健康に保って認知症を遠ざけるものがあります。

前者の油も、適量であれば、体内で細胞膜の材料になるなど、よい 働きをするので、摂取量を極端に制限する必要はありません。どちらかだけに偏らないよう、油の種類に気をつけましょう。

控える油と積極的にとる油を知る

とりすぎると動脈硬化や生活習慣病を招いて認知症のリスクを高める油は、肉の脂肪に多いパルミチン酸やサラダ油のリノール酸など。

これらの油は、外食や市販の惣菜に多く使われています。外食などには注意して、家庭ではサラダ油の代わりにオリーブオイルを使うなど工夫をしましょう。

一方、血管を健康に保つ効果があるのに不足しがちなのは、魚の脂に含まれるEPAやDHA、オリーブオイルのオレイン酸など。これらの油は意識して摂取量を増やすことが必要です。

といっても良質な油も、とりすぎれば生活習慣病や肥満を招き、かえって認知症のリスクを高めることになります。肉の脂やサラダ油などを減らし、その分を魚の脂やオリーブオイルに置き換える意識を持つことが大切です。

認知症の予防に積極的にとりたい油の成分

魚に豊富 EPA・DHA

魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン 酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、50代以上が積極的にとりたい成分。 EPAには強力な抗酸化作用があり、血管を健康にして認知症や生活習慣病を防ぐ。 DHAには、脳の神経細胞がスムーズに慟くのを助け、記憶力を高める作用がある。

オリーブオイルに豊富 オレイン酸

オリーブオイルや菜種油(キャノーラ油)、紅花油(サフラワー油)などに豊富なオレイン酸は、血液中の悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化や心臓病、高血圧を防ぐ効果が期待できる。加熱しても酸化しにくいのが特徴なので、加熱調理にはオレイン酸が含まれる油を。

アマニ油やエゴマ油に豊富 α-リノレン酸

アマニ油やエゴマ油など、オメガ3系油と呼ばれる油に豊富なのがα-リノレン酸。血液中の中性脂肪値を下げて、血栓(血の塊)をできにくくし、血液をさらさらにする効果がある。動脈硬化を防ぎ、認知症を遠ざける。ただし、熱に弱く、酸化しやすいので、加熱調理には向かない。

主菜は、肉よりも魚優先にする

認知症予防と食事、EPA ・ DHA

手軽に脂質のバランスを改善する方法が、主菜として魚の登場回数を増やすことです。魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)には、血管と脳へのメリットが多くあります。

油は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類されますが、不飽和脂肪酸は、体内でコレ ステロール値や中性脂肪値を下げる働きをします。動脈硬化を防ぐので、認知症を予防するためにも積極的にとりたい油です。EPAやDHAは、不飽和脂肪酸の一種です。

EPAは血管内の炎症を鎮め、動脈硬化を防ぐ

脈硬化は、血管内で炎症が起きている状態です。EPAには、血管内の炎症を抑える作用があり、動脈硬化の進行や、血栓(血の塊)ができて脳梗塞などが起こるのを防ぐ効果が期待できます。EPAには血液をさらさらに保つ働きもあるので、脳梗塞が原因で起こる脳血管性認知症の予防にもつながります。

DHAは神経細胞に作用し、脳の機能低下を防ぐ

DHAは、脳の健康を守る成分として注目を集めています。脳細胞や神経細胞の成長や機能維持に不可欠な栄養素で、多くとることで神経細胞がスムーズに情報伝達を行えるようになります。

脳の神経細胞は、年齢とともに減っていき、増えることはありませんが、DHAを充分に摂取することで、神経細胞を活性化させ、記憶力を高める効果が期待できます。特に50代以上は、積極的にとりたい成分なのです。

EPAやDHAは、さばやさんま、いわしなどの青魚や、まぐろの脂身(トロ)に豊富です。さばやいわしは、手ごろな価格の缶詰を活用するのもおすすめです。

EPA ・ DHAを効率的にとるコツ

1.句の魚や脂ののった魚を選ぶ

脂ののっている魚ほど、EPAやDHAが豊富。旬の魚を選べば、EPAやDHAをたくさんとることができる。また、養殖もののまぐろやサーモンは、通年脂がのっており、EPA、DHAが豊富。まぐろは、赤身よりも卜ロのほうがEPA、DHAの含有量が多いが、養殖ものは、手ごろな価格の赤身でも脂がのっている。

2.できるだけ生で食べる

EPAやDHAは、熱に弱く、調理のときに溶け出しやすい性質があるため、効率的に無駄なく摂取するには、できるだけ生で食べるのがおすすめ。刺身として食べるほか、積極的にとりたいオリーブオイルのオレイン酸も一緒にとれるカルパッチョなどでとるのもいい。加熱して食べるなら、溶け出した油も一緒にとれる煮魚や蒸し料理に。

調理油をオリーブオイルにする

そば

オリーブオイルは抗酸化物質を多く含む

調理油の定番、サラダ油のリノール酸は、酸化しやすく、とりすぎると動脈硬化を招いてしまいます。そこで、家庭の調理油を加熱に強いオレイン酸が豊富な油に変えましょう。サラダ油とひと口にいっても、実は、原料は商品によってさまざま。

加熱に強いオレイン酸の多い菜種油(キャノーラ油)の場合は、変更する必要はありませんが、大豆油やコーン油が中心の場合は、「オリーブオイル」に変えるのがおすすめ。

一度、ふだん使っている油の原材料をチェックしてみましょう。オリーブオイルは、オレイン酸のほかに、ビタミンEやポリフェノールも豊富です。

どちらも抗酸化作用があり、動脈硬化の進行を抑制して、血管を守る働きがあります。オレイン酸との相乗効果で、全身を健康に保ち、認知症を遠ざける体をつくることができるのです。

オリーブオイルの香りは、和食にもよく合う

オリーブオイルというと、洋食のイメージが強いですが、しょうが焼きやきんぴら、冷奴、納豆、そうめんなど、和食の定番料理にもよく合います。

オリーブオイルのほのかな苦みや、青葉のようなフレッシュな香りは、料理のアクセントに。しそやしょうが、ねぎなどの和食の薬味と似た感覚で使えます。酸化を防ぐために、直射日光の当たらない、涼しい場所で保管しましょう。

認知症予防以外のメリットも

骨粗しょう症予防

オリーブオイルを積極的にとる地中海食の健康効果を調査した研究では、オリーブオイルを毎日とる人は骨密度が高く、骨粗しょう症が少ないことがわかった。

便秘解消

オレイン酸は、腸を刺激し、動きを活発にする働きがある。また、油は腸管での便のとおりをよくするため、便秘解消の効果が期待できる。

オメガ3系油でDHAやEPAをとる

オメガ3系油は、体内でEPAやDHAに変わる
オメガ3系油

動脈硬化を防ぐためには、魚に豊富なEPAやDHAをとることをおすすめします。できれば、良質なたんぱく質も含む生の魚からとるのが理想的ですが、生魚や魚そのものが苦手という人もいるでしょう。

また、体にいいとわかっていても、外食が続いてとれない日もあるかもしれません。そんなときにおすすめなのが、アマニ油やエゴマ油などのオメガ3系油です。

アマニ油やエゴマ油に含まれるα-リノレン酸の一部は、体内でEPAやDHAに変換されます。つまり、魚をとったのと同じような効果が期待できるのです。

マイオイルを携帯すれば、外食でもプラスできる

オメガ3系油は、熱にとても弱く、酸化しやすい性質があるので、加熱調理には向きません。そのまま青菜のおひたしにかけたり、ドレッシング用の油として使うのがおすすめです。小さな容器に入れて食卓に常備しておけば、気づいたときに食事にプラスできます。

外食の多い人はキャップ付きの容器に入れて携帯するのもおすすめです。こうすれば、外食でもオメガ3系油をとることができます。

アマニ油はほとんどクセがありませんが、エゴマ油は、魚を思わせる風味があるのが特徴です。その風味が苦手という人は、納豆やごま和えなど、風味の強い料理に合わせるとよいでしょう。

オメガ3系油を取り入れるコツ

1.手作リドレッシングのベースにする

ドレッシングのベースに最適。酢やしょうゆ、みそなど、さまざまな調味料で自分好みのドレッシングを作ってみよう。

2.スープやみそ汁にたらす

スープやみそ汁などの汁物に数滴たらすのもおすすめ。汁ものに味がしっかりついているため、エゴマ油の風味が気になる人も、食べやすい。

ただし、熱に弱いため、加熱中の鍋に入れるのではなく、食べる直前にかけて。 

いつもの食材を地中海風にアレンジ

地中海式食事法

地中海地域の食事スタイルは、認知症予防に効果的

ギリシャやイタリア、スペインなどの伝統的な地中海式の食事が、今、世界中から健康長寿食として注目を集めています。

65歳以上の認知症ではない男女約1200人を4年間追跡した海外の調査では、地中海食をとっているグループは、そうでないグループに比べ、アルツハイマー型認知症の発症率が低いことが明らかに。

脳卒中や心筋梗塞など、血管性認知症の原因になる病気の発症率も低くなることもわかっています。

地中海食特有の食材を和食に取り入れる

実は、地中海食と和食には共通点があります。魚介と旬の緑黄色野菜を多く取り入れるのが特徴です。魚の油や緑黄色野菜の抗酸化作用は、血管を健康にし、認知症予防にも効果的です。

地中海食圈の人たちにあって日本人にない特徴は、オリーブオイルや赤ワインを日常的にとる食習慣。オリーブオイルのオレイン酸は、脳や体の健康のために積極的にとりたい成分です。

赤ワインには、抗酸化作用のあるぶどうのポリフェノールが豊富。適量のアルコールは動脈硬化のリスクを下げることも明らかになっています。

  • [1]厚生労働省 認知症予防マニュアル
    監修 独立行政法人国立長寿医療研究センター 鈴木 隆雄
    https://www.mhlw.go.jp/...
    [2]厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要
    https://www.mhlw.go.jp/...
    [3]認知症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/...

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